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社員にAIを教えるだけでは、AI変革は起こらない!?

業務改善 AI 仕事

社員にAIを教えるだけでは、AI変革は起こらない!?

ポイント

▸「作業の代行」から「思考の相棒」へ
AIの成果に影響する要因は、個人要因(個人のマインド・スキル):32% に対して、組織要因(文化・上司の支援・人材育成):67% が2倍以上の影響力を持つ。

▸役割の変化
人が「何をするかを決める」→ AIが「調査・分析・作成・処理する」→ 人が「評価・修正・判断・責任を持つ」。人の仕事は「作業すること」から「仕事全体を設計すること」へシフト。

▸人+AIエージェントで協働する前提
これから問われるのは「社員がAIを使えるか」ではなく、「会社が、AIと人の能力を組み合わせられる構造になっているか」である。

こんにちは、ワークスアイディの奥西です。

ChatGPTの一般公開は2022年11月30日。今が2026年9月なので、もうすぐ4年になります。今では「生成AIを使ったことがない」という方も、ずいぶん少なくなりました。インターネットの普及期と同様に、AI活用が前提の社会へと変化しています。

お客様とのMTGでも、「企業のAI活用は今後どうなっていきますか?」というご相談をよくいただきます。

そこで本日は、「社員にAIを教えるだけでは、AI変革は起こらない!?」をテーマに、一緒に考えていきましょう。実際のAI伴走支援から得た知見に加え、2026年5月公開の『Microsoft 2026 Work Trend Index Annual Report』の内容も参考にしています。

タイトルだけ見ると「AI研修は不要」という話に読めるかもしれませんが、そういう文脈ではありませんので、先にお伝えしておきますね。
ワークスアイディでも、生成AI勉強会やCopilot研修、neoAI Chat研修などを通して、従業員のAI『理解』を深める研修を実施しています(^^)

そのうえで本日お伝えしたいのは、“研修の先に何を用意しているか”で成果が決まるということです。

実際、レポートに印象的なデータがありました。
AIの成果に影響する要因を29個に分解して分析したところ、驚くべき結果が出たのです。

  • 組織要因(文化・上司の支援・人材育成):67%
  • 個人要因(個人のマインド・スキル):32%

組織側の要因が、個人の2倍以上の影響力を持っていたのです。

AIが変えるのは『仕事の速度』ではなく『人間の役割』

まずは『AI=業務効率化ツール』という認識を一歩深めてみましょう。

これまで人は、[考える → 調べる → 分析する → 資料を作る → 処理する]という一連の流れを担当していました。AIエージェントが普及すると、この中の『実行』にあたる部分の多くをAIが担えるようになります。

Microsoftのレポートでは、Microsoft 365 Copilotの会話10万件超(北米での分析)のうち、49%が[分析する・問題を解く・評価する・創造的に考える]といった認知的な作業の支援に使われていたと報告されています。資料作成などのアウトプット生成は17%にすぎません。

AIはすでに「作業の代行」ではなく、「思考の相棒」として使われはじめているということです。
人の仕事は「作業すること」から「仕事全体を設計すること」へシフトしているのです。

👤これから人が担うべき役割

  • 何を達成するかを決める
  • AIに何を任せ、何を自分で持つかを決める
  • AIへの指示と前提情報を設計する
  • 出てきたものの品質を評価する
  • 必要に応じて修正する
  • 最終的な判断と責任を持つ

AIによって人の仕事がなくなるのではなく、人が担うべき仕事の“階層”が一段上がるということですね。

『Agency(主体性)』という考え方

レポートには、Agency(主体性・裁量・自分で方向を決める力)という言葉が繰り返し登場します。主張は非常にシンプルです。

AIエージェントがExecution(実行)を担うほど、人間のAgency(主体性)は大きくなる。問題は、組織がその主体性を受け止められる構造になっているかどうかだ。
⏪これまで:
人が、考え、調べ、分析し、作り、処理する
⏩これから:
人が「何をするかを決める」➡ AIが「調査・分析・作成・処理する」➡ 人が「評価・修正・判断・責任を持つ」

業務の作業者から、ディレクター・設計者・判断者へと、役割が変わるということですね。

伸びる会社が鍛えているのは『課題発見力』

ここで、伴走支援の現場でもっとも目の当たりにしていることをお伝えします。

ワークショップで推進担当者が、「AIで何をしたいですか?」と問いかけると、たいてい手が止まっています。「では、いま業務で困っていることは?」と聞き方を変えても、やはり出てきません。

これは能力の問題ではありません。“自分の仕事を工程に分解して考える機会があまりなかったこと”が要因だと考えます。

うまく進む現場は、聞き方を工夫しています。「AIで何をしたいか」ではなく、「先週の仕事を1時間単位で書き出してください」から始めるのです。

すると、見積書の転記に毎週3時間、問い合わせの一次調査に4時間、といった具体が出てきます。
そこで初めて「この工程は誰がやっても答えが同じですね」「ここは判断が要りますね」という会話が成立します。

キャンスタウェビナーでもお話ししましたが、ボトルネックは上流に移動しています。ぜひウェビナーアーカイブもご覧ください!

本当のボトルネックは『社員』ではなく『会社』!?

レポートの中で私がもっとも興味を抱いたのは、次のデータです。

AI利用者を「個人のスキル」と「組織の受け入れ態勢」の2軸でマッピングしたところ、両方が高い「フロンティア層」は19%。
一方で、個人のスキルは高いのに組織が追いついていない「Blocked Agency(塞がれた主体性)」が10%存在していました。
そして半数は、どちらもまだ形になっていない移行途中です。

さらに、

  • リーダーシップがAIについて一貫した方針を示していると答えた人:26%
  • 「AIを使って適応しないと取り残される」と恐れている人:65%
  • 「仕事を再設計するより、いまの目標に集中するほうが安全だ」と答えた人:45%
  • 成果が出なくても、仕事の作り替えに挑戦したことが評価されると感じている人:13%

レポートはこれを『トランスフォーメーション・パラドックス』と呼んでいます。

社員は変わる準備ができているのに、評価指標・インセンティブ・慣習が、旧来のやり方を強化し続けている――という構図です。

――日本の数字が示すもの

そしてここからが、日本の私たちにとって重要なところです。同レポートの国別データを見ると、日本の現状は顕著です。

設問日本グローバル
リーダーシップがAIについて一貫した方針を示している14%26%
挑戦が評価されると感じる8%13%
1年前にはできなかった仕事ができるようになった43%58%

社員のスキルの問題ではなく、挑戦を受け止める組織構造に課題があることが、数字にもはっきり出ています。

――現場で起きている“詰まり”

AI伴走支援の現場でも、起きていることは一致します。

【ケース1】ルールの空白

1年以上前の話ですが、あるインフラ企業ではCopilotを数百ライセンス配り、研修も丁寧に実施しました。それでも3カ月後の定着率は3割前後。ヒアリングで出てきた理由は「使い方が分からない」ではなく、「どの業務に使っていいのか分からない」「稟議に使ったと書いていいのか分からない」でした。
足踏みさせていたのは、スキルではなくルールの空白だったのです。

【ケース2】基準の不在

あるメーカーでは、若手が請求データの突合をAIで1日から30分に短縮しました。素晴らしい成果です。しかし上司の反応は「本当に合っているのか、念のため全部手で確認して」。もちろん悪意はありません。確認する基準を誰も定義していないから、上司は自分の目でしか安心できないのです。
結果、工数は元に戻りました。

これらは技術の問題でも、個人の問題でもありません。組織設計の問題ですね。

そして私が課題だと感じるのは、こうした“詰まり”がほとんど報告されないことです。

経営層のもとには「利用率が伸びません」という結果だけが届く。すると次の一手が「もう一度、研修を実施しましょう」になってしまう――。実際にあったケースですが、このままでは悪循環に陥ってしまいます。

ここはこれからのAI前提のプロセスを踏まえた、仕組みや制度、組織設計が重要なポイントになっていきそうです。

『Operating Model』を、AI前提に組み直す

レポートのキーワードの一つに、Operating Model(業務運営モデル)があります。分かりやすく言えば“会社が実際に仕事を進める仕組み”のことです。

  • 誰が何を担当するか
  • 誰が判断するか
  • どこまでAIに任せるか
  • 誰がAIの成果を確認するか
  • どんな基準で評価するか
  • うまくいった活用をどう共有するか

“人間だけで仕事をする前提”の仕組みを、“人間+AIエージェントで協働する前提”に組み替える。

これがAI変革の本質です。

必要な3つの再設計

  1. 仕事の再設計:
    「この作業をAIにやらせる」ではなく、「この仕事全体を、人間とAIでどう分担するか」を考える
  2. 人間の役割の再設計:
    人間を実行者ではなく、目的設定・判断・品質管理・責任を担う存在として位置づける
  3. 組織の再設計:
    AI活用を、評価制度・マネジメント・人材育成・業務ルール・ガバナンスに組み込む

実際の取り組みとしてオススメしているのは、月1回か週1回、30分の『AI活用共有会』です。うまくいった話だけでなく、失敗した話、AIに任せて品質が足りなかった話を共有します。

組織でナレッジを共有する仕組みは、ツールだけでなくリアルな場も重要です。

デジタルの仕組みとアナログな仕組みが、人とAIが協働するモデルを進化させていくと考えています。

まとめ

これから企業の競争力を左右するのは、「AIを導入しているか」ではありませんね。インターネットと同様に、AI活用はどの会社もしている状態になります。

そんな環境の中で重要になるのは、「人とAIが最適に役割分担できる組織構造になっているか」です。

AIが実行能力を持つほど、人には[目的を定める・判断する・品質を管理する・責任を負う]という本質的な役割が残ります。そして企業には、人の新しい役割を最大限発揮できるよう、仕事そのものを再設計することが求められます。

AI時代に問われるのは、「社員がAIを使えるか」ではないですね。

ぜひ、皆さまの会社でも「会社が、AIと人の能力を組み合わせられる構造になっているか」という問いで議論してみてください。

それでは、本日もGOOD JOB!!

 

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