
▸『効率化』と『価値創出』
『効率化』だけでは長期的な差別化や競争優位にならないため、効率化で生まれた時間を『価値創出』へ再配置することが重要である。
▸浮いた時間を『価値創出』へ
効率化で生まれた時間は放っておくと組織の中に“溶けて”消えてしまうため、[効率化 → 余力創出 → 再配置 → 価値創出]という流れを意図的に設計する。
▸AI活用の次のテーマ
AI活用の次のテーマはAIそのものよりも“人の時間の使い方”をどう設計するか、そして浮いた時間を“何に使うか”を決め、AI活用とセットで“やめる仕事”を決めることである。
こんにちは、ワークスアイディの奥西です。
以前、弊社のYouTubeチャンネル【ハタシロク】で、「AIを活用して業務は効率化されているはずなのに、私自身は忙しくなっている……」という話をしたことがあります。
皆さまの会社や組織では、いかがでしょうか。
最近は、ご相談のテーマが『効率化』から『生産性向上』へとシフトする企業が増えています。つまり、“効率化されて、空いた時間の使い方の設計”をどうすべきか問われています。
実際にお客さまからは、「業務は確かに効率化できているが、会社の成果が目に見えて変わったわけではない」という声を伺います。
まさに、同じように感じている方も多いのではないでしょうか。
AI伴走支援をさせていただく中で、AIそのものはもちろん重要ですが、
AIを業務に適応し、組織に浸透させたその先で、限られた『時間』の使い方を再設計する取り組みが大事ですね。
そこで本日は“消えていく生産性”について、皆さまと一緒に考えていきましょう!!
生産性が“消えていく”4つの落とし穴
まずは前提として、
一人ひとりの作業時間が短くなっても、その浮いた時間が価値を生む活動に使われなければ、企業全体の成果は変わりません。
効率化で生まれた時間は、放っておくと組織の中に“溶けて”消えてしまうのです。
では、浮いた時間はどこへ消えていくのでしょうか。現場で見てきた共通パターンは、次の4つです。
(1)何かしている感じを出さないといけない
「手が空いていると思われたくない」という空気があると、空いた時間は待ち時間や、なんとなくの作業に変わってしまいます。
先日ある企業の若手社員は「AIで早く終わったことは、上司には言っていません」と、少し気まずそうに話してくれました。
何となく、この気持ちに共感する方は多いのではないでしょうか。暇そうと思われたくないですもんね。
――効率化の成果が、組織文化の中で“隠されて”いるパターンです。
(2)重要度の低いタスクが増える
「時間が空いたなら、これもやっておいて」
こうして仕事が次々に追加され、重要度の低い業務が増殖していきます。
(1)が“本人が隠す”パターンだとすれば、こちらは“周囲が仕事を足していく”パターンです。
本来は重要度の高い業務に時間を使いたいところですが、空いた時間に雑務が増えて生産性を下げてしまっています。
パーキンソンの法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
この法則は、AI時代にも健在です。組織も個人も、付加価値につながる業務の設計をしていないと、効率化で生まれた時間は結局『雑務』に使われてしまいます。
――重要度の高いタスクにこそAIを活用 していく。
これもまた一つ重要なポイントですね。
(3)品質を必要以上に追求する
AIで80点の資料が短時間で作れるようになった結果、浮いた時間を使って95点、98点を目指し始めるパターンです。
これも気持ちは分かりますが、社内向けなのにやり過ぎ…と思うことがあります。目的が資料を作ることになってしまい、80点から先の仕上げに時間を取られてしまっている状態ですね。
さらに、その仕上げまでAIに頼り切ってしまい、何度もAIに作り直しを依頼してトークン消費もかかってきます。しかしながら、ラストワンマイルは、まだ人手でやる方が品質が良かったりしますよね。
――80点までを効率化して、品質に関わる部分は人のクリエイティビティを活かす 方が、現時点では良いと感じています。
(4)“心地よい非効率”が増える
情報収集、社内調整、念のための調査、資料の見直し……
本人にとっては有意義な仕事でも、企業価値とのつながりが弱い活動に時間が流れていきます。
どれも“サボっている”わけではないからこそ、気づきにくいのが厄介なところです。
ここで強調したいのは、『忙しいこと』と『価値を生んでいること』は同じではないということ。これは、AI時代だからということではないですね。
一方で、心地よい非効率も、結果的に遠回りした経験も、長い目で見れば必要な資産になることはありますよね。私もムダからたくさん学んできました。
――AIで効率化が進む今こそ、仕事の『意味』や『意義』を問い直す きっかけにすると良いのではと考えています。
AIが『ブルシット・ジョブ』を増やしてしまう可能性
人類学者デヴィッド・グレーバーは、著書『ブルシット・ジョブ』の中で、
グレーバーの考え方を当てはめると、実はAIは、この“意味の薄い仕事”を増やしてしまう可能性があるのでは……と危惧しています。
- 詳細すぎるレポート
- 必要以上の会議
- 過剰な進捗確認
- 大量の資料作成
- 意思決定に使われない分析
AIを使えば、これらを“簡単に・短時間”で作れてしまうからです。
実際、ある企業では、AIで週報の作成が楽になった結果、週報のボリュームが倍になり、それを読む管理職の負担がむしろ増えていました。さらに、その週報をAIで要約して読むということにもなっていました。
便利になっているので一見ムダには見えませんが、このようなケースが皆さまの組織でも増えていないでしょうか。
AI活用の設計を間違えると、不要な仕事を削減するどころか、“より速く、より多く、不要な仕事を生み出す”ことになりかねません。
ワークスアイディのAI伴走支援でも、AIを業務に適応することとセットで、『やめる仕事』を明確にすることが不可欠だと考えています。
『効率化』だけでは競争優位にならない
本コラムの最後にもう一つ、今後検討していかないといけないテーマについて。それは、
要するに「既存業務を20%効率化する」だけでは、長期的な差別化になりにくいのです。みんなが同じだけ速くなれば、それは新しい『標準』になります。
重要なのは、
浮いた時間を『価値創出』へ再配置する
では、効率化で生まれた時間をどこへ再配置すればよいのでしょうか。例えば、次のような考え方です。
| 従来の効率化(AI活用) | 再配置先(価値創出) |
| 営業資料作成を短縮 | 顧客分析・提案の高度化へ |
| コーディングを高速化 | 新機能・新サービス開発へ |
| データ分析を自動化 | 市場予測・戦略立案・高度な意思決定へ |
| 問い合わせ対応を自動化 | 顧客体験の改善へ |
| 品質検査を自動化 | 原因分析・工程改善へ |
このように、[効率化 → 余力創出 → 再配置 → 価値創出]という流れを、意図的に設計することが重要です。
なかなか再配置は、自然には起きません。誰かが「浮いた時間はここに使う」と決めない限り、時間は先ほどの4つの落とし穴へと流れていきます。
まとめ
AIで業務は確かに効率化されています。ただ、効率化で生まれた時間は、放っておくと組織の中に“溶けて”消えてしまいます。
その原因は4つの落とし穴にあり、決して“サボっている”わけではないからこそ、気づきにくいのが厄介です。
AI活用を組織の成果につなげるには、
まずは、次の2つを決めることから始めてみてはいかがでしょうか。
- 浮いた時間を“何に使うか”を決める
- AI活用とセットで“やめる仕事”を決める
AI活用の次のテーマは、
私自身もまだまだ実践の途中です。皆さまと一緒に、効率化を『価値創出』へつなげ、AIを競争優位につながる使い方へとアップデートしていきたいと思います。
ぜひ、皆さまの会社でも“消えていく生産性”について議論してみてください。
それでは、本日もGOOD JOB!!
▼こちらもおすすめ

