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ハルシネーションはAIだけの問題なのか!?- AI活用における“誤り”を抑える3つの視点 –

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ハルシネーションはAIだけの問題なのか

こんにちは、ワークスアイディの奥西です。

企業でのAI活用がどんどん進んでいますね。
これまでは個人レベルの利用が中心でしたが、今では業務プロセスそのものをAIが担う段階に入っています。

私がAI伴走支援をさせていただく中で、最近こんなエピソードがありました。
昨年時点では『AIの精度不足』を理由に、AIへの置き換えは厳しいと判断していた業務がありました。しかし、今年に入って再び検証してみると、アウトプットの品質面で見事にクリアするレベルに達していたのです。

私自身の努力の成果ではないので誇れる話ではありませんが(笑)、“AIの進化で活用領域は確実に拡がっている”と肌で実感した瞬間でした。

さて、本日はそんなAI活用につきまとう『品質・精度』というテーマです。お客様とAIの話題になると必ず出てくるテーマですが、そのたびに私の中で浮かぶ問いがあります。

それは「ハルシネーションはAIだけの問題なのか?」ということ。

そもそも人の判断や情報伝達も、かなり不完全なものですよね。
本日はこの“問い”について、一緒に考えていきましょう!

ハルシネーションはAI特有の問題なのか?

AI導入でよく語られるのが『ハルシネーション問題』です。そもそも、AI時代になるまで、ビジネス現場で「ハルシネーション」なんて言葉を使ったことはなかったですよね。

📌ハルシネーション(Hallucination)とは?

AIがもっともらしく“誤った情報”を生成してしまう現象のこと。
事実とは異なる内容を、さも真実かのように語ってくる現象。
一般的には、精神的な幻覚や錯覚という意味。

生成AIは、過去の膨大なデータの推論を『言語化』することが得意ですが、必ずしも『正解』を答えてくれるわけではありません。しかし、知識量が圧倒的なので、つい頼りすぎてしまいます。

では、これは本当に“AIだけ”の問題でしょうか。

日々の業務を振り返れば、こんな場面に心当たりがあるはずです。

  • メールの読み違いにより、意思疎通が取れていない
  • 会議での発言内容を勘違いしたまま、プロジェクトが進んでしまう
  • 上司への報告が、なぜか全く違うニュアンスで伝わっていた
  • ヒアリング情報の解釈が、担当者同士でズレていた

つまり、人間も日常的に『ハルシネーション』を起こしているのです。
だからこそ、企業が考えるべき本質は“AIの誤りをゼロにする”ことではありません。

「誤り(ハルシネーション)があることを前提に、どう運用するか?」

このリスクマネジメントの視点でAI活用を設計することが、成功への重要なポイントだと考えます。

『ハルシネーション対策』はリスクマネジメント設計

よくAIの誤りばかりが指摘されますが、実務でより頻発しているのは『人間側の誤認知』です。

⚠️ビジネス現場で起きる『人のハルシネーション』

  • “勘と経験”に頼った判断が、実データと矛盾していた
  • 部門間の認識がズレたまま走り出し、大きな後戻りが発生
  • 決裁者が「聞いていた話と違う」と言い出し、資料が作り直しに
  • 記憶に頼った顧客分析が誤っていたため、施策が不発に終わる

これらはすべて、人間の認知バイアス・思い込み・記憶違いから生まれています。

AI活用に慎重な企業ほど、まず完璧な『精度』を求めがちです。
確かに品質は大事ですが、“どこまで求めるのか”の定義が重要です。なぜなら、人間が遂行しても100%正しいということはあり得ないからです。

そのため、精度100%を目指すのではなく、“その業務に必要な精度”を定義しましょう。

業務の難易度によっては、AIで100%近い精度を出せるものもありますが、多くの業務プロセスは小さなタスクの集合体です。タスクごとに難易度と必要精度を定義し、AIと人で分担する進め方がGOODです。

AIと人の役割分担(例)

  • 社内資料のドラフト:AIで70%まで自動生成
  • 契約書チェック:AIで一次チェックし、人間がファイナルレビュー
  • メール返信:AIで案を作り、担当者が微調整して送信
  • データ分析:AIで仮説を生成し、分析者が検証する

この『役割分担の設計』こそが、AI時代の新しい仕事の進め方になります。

以前のコラムでも触れていますので、併せてぜひご覧ください。

ハルシネーションを抑える3つの視点

ハルシネーションリスクを小さくする取り組みは、AI活用を大きく前進させます。
『技術』『人材・組織』『運用』の3つの視点で整理していきましょう。

(1)技術的対策:適切なモデル選定とプロンプト設計

業務の難易度や要求精度によって、最適なAIモデルは変わります。

  • 文章生成が得意なモデル
  • コード生成が得意なモデル
  • 画像処理が得意なモデル
  • 推論が得意なモデル

業務の難易度に応じて、適材適所でモデルを選定するのがポイントです。

また、『プロンプトエンジニアリング(設計)』も重要です。

「どんなインプット(入力)だと誤りが発生しやすいのか?」
出力内容をモニタリングし、プロンプトを改善し続けることで、精度は着実に向上します。

(2) 人的・組織的対策:レビュー基準の明確化

AIの弱点を『人のレビュー』で補完し、組織として品質を維持する領域です。

「どのタイミングで」「誰が」「何をチェックするか」
ここを曖昧なままにすると、責任の所在も品質も曖昧になってしまいます。

AIのアウトプットを人がレビューする際の“基準”を、業務ごとに定義しておくと運用しやすいですね。

🔍チェック項目の例

  • 文章品質…読みやすさ、トーン&マナーの一貫性
  • 事実確認…引用元のチェック、数字の整合性
  • 判断基準…意思決定が必要な内容が含まれていないか

チェック項目を明確にするだけで、現場は安心してAIを使えるようになります。
モデルの進化に伴いチェックの必要可否は変化しますが、業務品質を担保するうえで、人のチェックは重要なプロセスとして残り続けるでしょう。

(3)業務プロセス面(運用):AIをチームの一員に

AIを「どの範囲で、どう活用するか」という業務設計の視点です。

AIはとても優れた能力を持っていますが、決して万能ではありません。利用範囲を明確にすることで、リスク管理がしやすくなります。

🤖AIに任せるタスク(例)

  • 草案作成(アイデア出し、企画構成)
  • 要約(論文、仕様書、長文ドキュメント)
  • 分析(アンケート集計、数値データの傾向把握)
  • チェック補助(照合業務、誤字脱字チェック)

業務プロセス全体をいきなりAIに任せるのはハードルが高いですが、こうした“タスク単位”ならAIは非常に有効です。

AIを“人の代わり(代替)”と捉えるのではなく、『チームの一員(パートナー)』として捉え、活用を設計していく。
そしてアジャイルに改善しながら、自社の業務にフィットするようにAIを“育てて”いきましょう。

まとめ

AIはハルシネーション(誤り)を発生させます。しかし、人間も同様に間違えることがありますよね。

そう、ハルシネーションはAIだけの問題ではありません。

そう考えると、これまでの業務と同じように、“誤りを前提にした仕組みづくり”が必要です。

これからは『AIエージェント』が活躍する時代です。小さなタスクを組み合わせ、自律的に作業を代行してくれるようになります。
「ハルシネーションがあるからAIはダメだ」と切り捨てるのではなく、ハルシネーションを抑えつつ、一定のリスクは許容しながら賢く運用していきましょう。

ぜひ、皆さまの会社でも『ハルシネーション問題と向き合い方』について議論してみてください。

それでは、本日もGOOD JOB!!

 

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