
▸AIの『導入』と『活用』
『導入』はセキュリティ要件やシステム連携などIT部門が得意とする領域。『活用』は現場の業務部門にしかわからないペインポイント(痛点)の解消。
▸『活用』のハードルと分断
操作方法は習得できても、何に使えばいいかわからない。IT部門が旗振り役になると“他人ごと”の認識となり、利用率は落ち込む。
▸業務部門が主語となる二人三脚
IT部門は活用を支えるガードレールの設計者。現場を知る業務部門が活用の主役となり、IT部門と二人三脚で推進することが重要。
「生成AIはIT部門に検討してもらっています」
商談の場でよく耳にする言葉です。
これまでITやデジタル化の推進を『IT部門』中心で進めてきた会社ほど、AIの話題が出るたびに反射的に『IT部門』の担当だ、となりがちです。
しかし、「IT部門に任せる」という判断や慣習は、AI活用を推進する上で本当に最適でしょうか?
実際にお客様と議論する中でも、この“問い”が頻繁に挙がります。
この2年、先行してAIに取り組んだ企業を振り返ると、“IT部門だけ”でAI活用が進むケースは少なかったように思えます。IT部門に一任した結果、『AI導入』に留まり、『AI活用』が進まないというご相談もいただきます。
今回は、なぜAI活用において“IT部門任せ”が危険なのか、その構造的な理由を、現場で起きている実例を交えながらお伝えしていきます。
『AI導入』と『AI活用』は別物
まず整理しておきたいのは、AIの『導入』と『活用』は別物だということです。
『導入』は、IT部門が得意とする領域です。
予算計上やシステム連携、セキュリティ要件などは本業であり、ノウハウを最大限発揮できるだけでなく、組織の安全を守るためには欠かせないプロセスですよね。
しかし、問題は『導入』の後に始まります。
もっとも、多くのIT部門はこの課題を認識し、活用する部門やプロジェクトメンバーへの『展開(教育・育成)』まで設計しています。私自身、ご支援の中でIT部門の方々とご一緒する機会が多く、丁寧な『展開』に支えられて進むプロジェクトは少なくありません。
こうして、『導入』から『展開』があり、ここから『活用』というフェーズに移っていきます。

ただし『活用』フェーズでは、分かりやすいマニュアルや説明資料、勉強会があっても、いざ業務で使おうとすると大きなハードルが待ち構えています。
日本企業のAIへの関心・意欲は、他国と比較しても高まっていますが、「期待を上回る効果を実感している」割合は依然として低いという結果が出ています。
それは一体何故か?そのハードルは、業務の中にあります。
『活用』のハードルは、業務の中にある
「マニュアルは読んだ。使い方はわかった。でも、何に使えばいいかわからない」
『展開』後、現場で最も多く聞く声です。
ツールの操作方法は習得できても、「自分たちの業務のどの部分に、どう当てはめるか」は、業務を知る人にしか判断できません。
ここに構造的な問題があります。IT部門は業務フローの『全体像』を把握していますが、
「この承認作業で毎週3時間かかっている」「この資料作成が属人化していて引き継げない」
といった『ペインポイント(痛点)』は、現場の業務部門にしかわかりません。
AIが最も力を発揮するのは、まさにこの『ペインポイント』の解消です。
しかし、現場の痛みを知らない人が活用シーンを設計しても、的外れなユースケースが量産されるだけになってしまいます。
インターネット上の『AI活用事例』は参考になりますが、“事例通り”に各社が同じ課題を解決できることはほとんどありません。例外は、個々人の手元で使う『作業』レベルの活用です。一方で、部門固有の専門業務の領域となる『業務ユースケース』は各社様々なんですよね。
IT部門が“旗振り役”になると起きやすい失敗
“IT部門主導のAI活用”で陥りがちな典型的なパターンがあります。
2. 各部門に「使ってみてください」と展開
3. 反応が薄い ➡️『操作説明講座』を開催
4. それでも定着しない ➡️『活用促進チーム』を立ち上げ
『導入』から『展開』までの流れです。取り組み自体は良いものの、部門単体でここまで進めることは、日常業務の兼ね合いやリソースの課題で難しいところですよね。
ここでの構造的な問題は、“活用の推進”と“業務改善のニーズ”が分断されていることです。IT部門がいくら丁寧に展開しても、業務部門側に“自分ごと”の感覚が生まれにくいのです。
あるメーカーでは、IT部門がAIツールを導入し、全社展開まで完了。しかし半年後、MAU(月間アクティブユーザー)を確認すると、利用率は導入時の3割まで落ち込んでいました。原因は明確で、業務部門は『IT部門が入れたツール』という“他人ごと”の認識のままで、自分たちの業務を改善するための“自分ごと”として捉えられていなかったのです。
結果、活用にばらつきが生まれ、属人化ツールとなり、本来期待した効果を見出せない状態になってしまいました。
では、IT部門はAI活用に不要なのか?
ここまで読んでいただくと、「IT部門は不要なのか?」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
むしろ、AI時代におけるIT部門の役割は、『活用を支えるガードレールの設計者』として重要性が増しています。要するに、AI活用の『基盤』や『土台』を担う存在です。
❓業務部門がAI活用を進める際に必ずぶつかる問い
- このデータを使ってよいか
- 社外に情報が出ないか
- どこまでの権限でアクセスしてよいか
これらに即応できる体制を整えるのは、IT部門の役割です。業務部門のやりたいことをスピーディーに実現するためのガードレールを設計・運用する。
理想は、IT部門がインフラと安全を担保し、業務部門が活用を主導する“二人三脚”です。
どちらが欠けても、AI活用は進んでいかないですね。
まとめ
IT部門に『導入』を任せるのは正解です。
しかし、『活用』の主語は、業務部門でなければなりません。
AIは単なる便利なツールではなく、“組織の戦い方や在り方”そのものを変えていける力を持っています。だからこそ、現場を知る業務部門が活用の主役となり、IT部門と“二人三脚”で推進していくことが、とても重要なポイントですね。
「AI活用はIT部門に任せている」という言葉を、ぜひもう一度問い“直して”みてください。その一言が、AI活用の速度と深度を大きく左右しているかもしれません。
企業のAI活用をどう進めるべきか迷われた際は、ぜひお気軽にご相談ください。
それでは、本日もGOOD JOB!!
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