新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとして、多様な働き方があらためて注目されるようになりました。なかでもテレワークの拡大は象徴的であり、従来のオフィスワークと並行するハイブリッドワークも検討されはじめています。そんななか、新たな時代の働き方に対応するための概念として考えられているのが、「デジタルワークプレイス」です。今回は、デジタルワークプレイスとは何か、企業が導入するメリットや注意点も含めて解説します。
デジタルワークプレイスとは?
デジタルワークプレイスとは、時間や場所に関係なく快適に働くことができ、かつ従来と比較し企業の生産性を高められるデジタル上の仕事空間のことを指します。
少子高齢化が進む日本において多くの企業では人手不足に陥っていますが、この流れは今後さらに加速し、深刻な労働力不足が懸念されています。そのような将来を見据えたとき、従来通りの働き方のままでは企業がこれまでの生産性を維持することは難しいでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症をきっかけとして働き方が見直されているなか、テレワークやハイブリッドワークといった新しい働き方が注目されています。
このような観点から、企業が今後も成長していくための戦略として、あらゆるデジタル技術を活用しながら生産性を高めるデジタルワークプレイスは重要な概念といえるのです。
デジタルワークプレイスとDXの関係
近年、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進に取り組む企業が増えていますが、デジタルワークプレイスとDXには密接な関係があります。
そもそもDXとは、デジタル技術によってビジネスモデルを変革することであり、企業の長期的な成長を実現するといった目的があります。これを実現するためには、AIやIoT、クラウドといった次世代のテクノロジーの活用が欠かせません。
そして、上記で示した次世代のテクノロジーはDXだけでなくデジタルワークプレイスを実現するにあたっても重要な役割を果たします。そのため、DXの実現に向けたビジネスモデルを構築するうえで、デジタルワークプレイスとの親和性は高いといえるのです。
デジタルワークプレイス導入のメリット
企業がデジタルワークプレイスを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。代表的なメリットとして考えられるポイントを3つに分けて紹介します。
生産性向上
デジタルワークプレイスの目的は単なる業務の自動化や効率化ではなく、生産性を向上させることです。
アナログな業務プロセスをデジタルへ移行しただけでは生産性が向上するとは限らず、デジタル環境に最適化した業務プロセスを実現することが前提となります。
例えば、PCでしか運用・管理できない業務プロセスだと、オフィスへ出社しなければ対応できず生産性は高いといえません。そこで、スマートフォンやタブレット端末など、インターネットに接続できるデバイスから操作できるシステムやツールを導入することで生産性は飛躍的に向上します。
従業員満足度の向上
生産性が向上することで企業の業績にも直結し、利益が社員にも還元されるようになります。その結果、従業員満足度は向上しさらなる業績アップも期待できるでしょう。
同時に、時間や場所にとらわれることなく働けるデジタルワークプレイスでは通勤にかかる負担も大幅に軽減され、ワークライフバランスも向上します。
人材採用力の向上
従業員満足度が高く働きやすい環境を構築している企業は、労働者にとって魅力的な職場です。高度なスキルを持った専門人材や、多様な経験を積んだ優秀な人材は多くの企業からの引き合いがあるため、企業を吟味し、快適で条件の良い労働環境を求めます。
デジタルワークプレイスに取り組むことは企業の採用力強化にもつながり、優秀なDX人材が確保されDX推進を加速することにもつながるでしょう。
デジタルワークプレイス導入時の注意点・ポイント
企業がデジタルワークプレイスを導入するにあたり、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。
業務のデジタル化とは異なる
上記でも紹介したとおり、デジタルワークプレイスは従来の業務内容をベースにデジタル化を実現することではありません。
例えば、紙でやり取りしていた稟議書をWordファイルで作成し、メールでやり取りするのは業務のデジタル化に該当します。これに対し、例えばクラウドベースのシステムに稟議のワークフローを移行し運用するのがデジタルワークプレイスの概念といえます。
業務のデジタル化からデジタルワークプレイスへと移行できれば、例えばWordが開けないデバイスでも必要項目を入力するだけで簡単に稟議書を上げられるようになり、時間や場所にとらわれない働き方が実現できます。
勤怠管理・評価システムの検討
デジタルワークプレイスによって時間や場所にとらわれることなく働けるということは、勤怠管理が複雑化する可能性があることも意味します。
オフィス以外のさまざまな場所で働くことを考えたとき、従来のようなタイムカード方式では物理的に勤怠を記録することができません。そのため、タイムカードに代わってクラウド勤怠管理システムなどを導入する必要性も出てくるでしょう。
さらに、デジタル化によって生産性を向上させるという目的を果たすためには、より短時間で成果を上げた場合に評価できる仕組みも整備する必要があります。
セキュリティ対策
デジタルワークプレイスはオンライン環境がベースとなりますが、セキュリティ対策が脆弱だと不正アクセスによって機密情報や顧客情報が漏えいするリスクが生じます。
このような問題を解決するためには、業務内容に応じてアクセス権を設定したり、社外からアクセスする際にはVPNを経由したりするなどの基本的な対策が重要です。また、これらに加えて、ゼロトラストセキュリティモデルで万全の対策を講じることも検討しましょう。
新しい時代に必要となるセキュリティに関しては、こちらの記事もご参照ください。『クラウドセキュリティはなぜ重要?セキュリティ課題の解決に向けて注目されるSECaaSとは』
デジタルワークプレイスの導入方法
企業がデジタルワークプレイスを導入する場合、具体的にどのような手順・方法で進めればよいのでしょうか。3つのステップに分けて解説します。
業務に必要なツールの選定
はじめに、テレワークを前提とした環境下でもスムーズに業務が遂行できるよう、必要なツールやシステムを選定します。
業務内容や業務プロセスに応じたツールを選定することが重要であり、代表的なものとしてはチャットツールや各種クラウドサービスなどが挙げられます。
セキュリティ対策
PCやアプリケーションの自動アップデートを有効化し常に最新のバージョンに更新、セキュリティ対策ソフトウェアのインストールなどの基本的な対策を講じておきましょう。
さらに、導入時の注意点でも紹介したゼロトラストセキュリティの構築のほか、VPNの導入といった対策も有効です。
就業規則の見直し
リモート環境に適応した勤怠登録の方法へ変更するとともに、各種手当や評価基準の見直しなど、就業規則の変更を行いましょう。
ただし、就業規則の変更にあたっては、従業員にとって一方的に不利な条件にならないよう慎重に検討することが重要です。
DXの推進にもつながるデジタルワークプレイスの実現
今回紹介してきたように、デジタルワークプレイスの本質は現在の業務をデジタル化することではなく、デジタルを前提とした業務プロセスへと根本から見直すことといえます。
これはDXの推進にも共通している内容であり、デジタルワークプレイスに取り組むことで着実にDXに近づくことも意味しています。
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参考: