従来型の実店舗での販売だけでなく、EC事業者としてネット通販サイトを活用したビジネスを展開する企業が増えています。店舗運営に比べて必要最小限の経費・人件費で運営できるため、今後EC事業への参入を検討している事業者も少なくありません。
しかし、実店舗の運営が不要とはいえ、EC事業を運営するにあたってはさまざまなルーチン業務もあり、業務自動化が不可欠です。そこで今回は、RPAを活用してEC事業者のルーチン業務を最適化する方法を紹介します。
もっと効率化できる? EC事業者におけるルーチン業務
そもそもEC事業者では、どのようなルーチン業務があるのでしょうか。代表的なルーチン業務をピックアップするとともに、それらを効率化するために現状どのようなツールが導入されているかもあわせて解説しましょう。
商品情報の登録・更新
新たに取り扱いを開始した商品について、ECサイト上での登録作業を行ったり、終売した商品の削除を行ったりする作業です。また、売価変更があった際にも、都度情報を更新しなければなりません。
取扱商品の種類が少ない場合には手作業でも問題ありませんが、ほとんどのEC事業者では数十種類、数百種類以上の商品を扱っています。そのため、自社独自のECサイトを立ち上げているEC事業者ではCMSと呼ばれる専用ツールで管理しているほか、大手ECサイトへ出品しているEC事業者では専用の一元管理ツールを活用しているケースも珍しくありません。
在庫管理
在庫管理とはその名の通り、商品の売上や入荷に応じて在庫を管理し、ECサイトへ在庫情報を反映する作業です。在庫管理が適切に行われていないと、ユーザーがオーダーした際に在庫がなくなり、クレームにつながることもあるでしょう。
EC事業者によっては、表計算ソフトを利用し手作業によって入力しているケースもあれば、在庫管理専用のツールを活用している事業者もあります。特に取扱商品数が増えれば増えるほど、手作業での在庫管理が煩雑化するため、在庫管理用ツールを利用するケースが少なくありません。
売上レポート
売上レポートとは、ECサイトごと、または商品ごとの売上を集計しレポートとして出力する作業です。売上レポートを出力することで、売れ筋商品などの傾向を分析でき、販売戦略に活かすことができます。
こちらの作業も、在庫管理と同じく手作業で集計しているEC事業者もあれば、CMSに組み込まれている機能や専用の一元管理ツールを活用している事業者も存在します。
価格調査
競合他社のECサイトで販売されている価格の傾向を分析し、自社の販売戦略に活かす作業が価格調査です。大手ECサイトではさまざまなEC事業者が出品しており、価格もそれぞれ異なります。また、ECサイトによっても最安値が異なるケースもあり、市場価格よりも高い価格設定がされていると商品の売上に影響することもあるでしょう。
複数のECサイトで商品名を検索し手作業で最安値を調査する方法もあれば、専用の価格調査ツールを活用している事業者も少なくありません。
EC事業者のルーチン業務の課題点
EC事業者は商品を出品して終わりではなく、さまざまなルーチン業務があることが分かりました。では、上記で紹介したルーチン業務のなかで、EC事業者はどのような課題を抱えているのでしょうか。典型的な課題の例として2つのポイントを紹介します。
非効率的な手作業
取扱商品の種類が限定的で、出品しているECサイトの数も少ない場合は手作業でも負担は少なくてすみます。むしろ、そのような小規模なEC事業者にとっては、手作業のほうがコストもかからず経営効率の観点から見ればメリットのほうが多いといえるでしょう。
しかし、売上規模の大きいEC事業者のほとんどは取扱商品数が多く、これから事業拡大に向けて商品数を増やそうと検討しているEC事業者も少なくないはずです。そのような事業者にとっては、データの集計作業やECサイトの更新、その他一連の業務を手作業で行っていると非効率になります。取り扱う商品の種類が増えたとしても、できるだけ人手をかけることなく続けられる仕組みづくりが求められるでしょう。
専用ツールの使い分け
さまざまなルーチン業務について手作業から脱却し、専用ツールを活用して自動化を実現しているEC事業者も存在します。
しかし、在庫管理や売上レポート、価格調査など、業務ごとに専用ツールが存在するため、それらを使い分ける必要もあります。また、専用ツールを導入すれば業務効率はアップするものの、その分導入コストや運用コストもかかってしまいます。そのため、専用ツールの導入にあたっては、費用対効果を十分検討することが求められるでしょう。
EC事業者のルーチン業務を最適化するRPA
では、EC事業者のルーチン業務における課題を解決するために、どのような方法が考えられるのでしょうか。上記で紹介した「非効率的な手作業」と「専用ツールの使い分け」の課題に対しては、解決方法のひとつとしてRPAの活用が挙げられます。
定型業務の自動化
RPAを導入すれば、ECサイトごとの売上レポートや在庫管理、価格調査など、手作業で行っている業務の大半を自動化することが可能です。
従来の方法では、それぞれの用途に応じて専用のシステムを一から開発し導入する必要がありました。しかし、この場合はシステム開発に莫大なコストがかかるほか、業務に応じてシステムを使い分ける必要があります。しかし、RPAの場合、業務に特化した専用ツールを導入せずとも、ルーチン業務をRPAに学習させることで自動化が可能です。
システム開発にかかる費用を大幅に低減できるほか、導入までの期間も短縮でき効率的なシステム運用につながるでしょう。
専用ツール間の連携も可能
特定の業務に特化した専用ツールは、それぞれが独立したシステムであるため、異なるシステム間を連携させるためには個別開発が必要となります。例えば、ある商品の在庫がなくなった場合、在庫管理システムの情報を確認したうえでCMSへログインし、ECサイト上の商品情報ページを「売り切れ」と更新する必要があります。これを自動化するためには在庫管理システムとCMSとの間でデータのやり取りを実現しなければなりません。
しかし、すべてのシステムが外部システムとの連携を前提に開発されているとは限らず、システム改修に多額のコストがかかるケースもあります。RPAであれば、PC上でロボットが動作し、複数のシステムを横断的に操作できるため、実質的にシステム間の連携を簡単に実行できるのです。既存のシステム間を連携させるために個別開発を行う必要もなく、RPAを導入することで安価にシステム連携が可能です。
RPAの導入は中小事業者にもおすすめ
EC事業者は日々さまざまな業務をこなす必要があり、なかでも在庫管理や価格調査といったルーチン業務が占める割合は決して少なくありません。取扱商品数が限られている小規模なEC事業者であれば手作業でも十分対応可能ですが、事業規模が大きくなると手作業は難しくなってきます。
これまではルーチン業務を自動化するための方法として、専用システムの導入が一般的でした。しかし、業務内容に合わせてツールを連携することは技術的なスキルが必要であったり、莫大な開発費用がかかったりするという問題があったことも事実です。
そのような課題を解決する方法として、今回紹介してきたRPAの活用は最適です。RPAは最小限のコストで業務自動化を実現できることから、これまでコストの問題でシステム導入を見送ってきた中小事業者にとっても有効な方法といえるでしょう。
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