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コラム

2020年秋以降、5Gが爆発的に普及する? エリア拡充に向けた新たな取り組み

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2020年秋以降、5Gが爆発的に普及する? エリア拡充に向けた新たな取り組み

2020年春、日本国内で5Gの商用サービスが開始されましたが、ユーザーは伸び悩んでいる現状があります。対応端末が少ないという要因もありますが、そもそも5Gは4Gとの電波の特性が異なることも重要なポイントです。

2020年秋以降、このような現状を打破すべく、大手通信各社はエリア拡充に向けたさまざまな取り組みをスタートする予定です。今回は「5Gとは何か」を解説するとともに、「日本と世界の違い」やエリア拡充に向けた取り組みの事例を紹介します。

5Gとは

5Gの「G」は「Generation」を指し、携帯電話などに用いられる無線通信国際規格の5世代目にあたるネットワークという意味を指します。5Gは「高速・大容量」「低遅延」「多接続」という3つの特性を持ち合わせており、5Gの国際標準化を進める3GPP(3rd Generation Partnership Project)という組織が定義しています。

これらの特性を活かし、自動運転や遠隔医療をはじめとした新たな社会基盤を支える技術として注目されており、日本では2020年3月から商用サービスがスタートしました。2020年10月時点では5Gを利用できるエリアはごく一部に限られていますが、今後急速に5Gの対応エリアは拡大していく予定です。

4Gと5Gとの違い

5Gの商用サービスがスタートしたとはいえ、現時点で主流となっているのは4Gです。多くの方が気になっているのは、4Gと比較したときに5Gはどの程度の違いがあるのかということではないでしょうか。5Gには「高速・大容量」「低遅延」「多接続」という3つの特徴があると紹介しましたが、これを4Gに当てはめて考えてみると、通信速度は20倍、遅延は10分の1、同時接続数は10倍にアップすることになります。

4Gによる通信でもYouTubeのような動画コンテンツはストレスなく視聴できますが、5Gになってさらに通信速度が速くなると、4Kや8Kレベルの超高画質な動画も瞬時にダウンロードできるようになります。また、YouTubeライブやインスタライブといったストリーミング配信サービスもさらに活況となることが期待されます。携帯電話ネットワークは世代が進化するごとに通信速度も高速になってきた歴史があるため、高速・大容量という点においてはイメージしやすいのではないでしょうか。

また、遅延の少なさは自動運転や遠隔医療などの、高度なリアルタイム性が求められる場面で活躍します。例えば自動運転で走行中、通信に遅延が生じてしまうとハンドリングやブレーキ制御にも影響が及ぶ可能性もあります。安全性を高めるうえでも5Gの低遅延という特性は極めて重要な役割を果たすのです。

さらに、同時接続数のアップはIoT時代に欠かせない要素です。5Gでは従来のように一度に多数のデバイスが接続するとネットワークがダウンしてしまうリスクも低く、無数のセンサーデバイスが必要となるIoTを支えるネットワーク基盤として不可欠です。

5G普及への最大の課題となっているエリア拡充

2020年9月現在、5Gを利用できるのは全国の一部の主要駅周辺に限られます。東京23区内でも利用できるエリアは限られており、駅から数分歩いただけで5Gのエリア外となってしまうケースも多いのです。そのため、5Gの普及に向けてはエリア拡充が喫緊の課題となっており、大手キャリアも認識しています。NTTドコモは2023年度中に基地局の展開率を97%へ、KDDIは2021年度末には5万局、ソフトバンクも同年末には5万局の整備を目指しており、本格的な普及にはあと数年の時間がかかる予定です。

5Gの基地局整備が思うように進まない理由として、4Gと5Gが扱う周波数帯が異なることが挙げられます。4Gの場合は700MHz~3.5GHz帯、5Gでは3.7GHz~28GHz帯の周波数が使用されていますが、一般的に周波数帯が高くなると通信速度は速くなる一方で、電波が届く範囲は狭くなる傾向にあります。そのため、周波数帯が高い5Gは4Gよりも多数の基地局が必要となり、物理的に基地局の整備に時間を要してしまうのです。

5G普及へ向けた日本の取り組み

5Gの普及へ向け、総務省では2020年秋以降に4Gの基地局を5Gに転用できるよう規則を改正する見込みです。これは本来4Gで使用されている700MHz~3.5GHzの周波数帯を、5Gに転用するための「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」という技術を採用し実現されます。DSSとはスウェーデンのエリクソン社が開発した技術で、すでに設置されている4Gの基地局に対し、物理的な工事を行うことなくソフトウェアのアップデートのみで対応できるため、エリア拡充は急速に進むと期待されます。

一方で、DSSにおいて使用する周波数は4Gと変わらないため、5Gならではの低遅延や多接続の特性は活かせるものの、肝心の実効速度は4Gと変わらず本来の5Gの性能は実現できないとの見方もあり、NTTドコモは慎重な姿勢を見せており、4G用周波数帯の5Gへの転用は現時点では採用しないことを表明しました。(※2020年10月現在)

スマートフォンの画面上には「5G」の表示が出るものの、実質的な中身としては4Gと大差がないため、「なんちゃって5G」とも呼ばれることも。また、DSSの技術では4Gと5Gが同じ帯域に共存することになるため、双方のユーザーが混在し4Gと5G両方の速度が低下してしまうのではないかと懸念されているのです。

しかし、少なくとも5G対応端末が普及すれば、本格的な5G基地局拡充への機運も高まっていくのではないかとも期待されています。

5Gが及ぼす健康被害への懸念

5Gの普及に向けて今以上に基地局が林立するようになると、5Gが健康被害を及ぼすのではないかと懸念する声もあります。5Gが、これまでの携帯電話に比べて高い周波数帯の電波を発することも不安を呼ぶ要因となっていることもあるでしょう。

しかし、5Gに使用される周波数帯の一部は、普段私たちが使用しているWi-Fiの周波数帯とも同じであり、十分な安全対策がされています。日本国内の通信キャリアにおいては、総務省が定める「電波防護指針」に沿って基地局を設置しており、基地局の設置場所や電波の強度を調整しながら極めて高い安全性が考慮されているのです。「電波防護指針」とは過去40年間の国内外の電波に関する研究や実験をもとに策定したもので、研究結果から算出された数値よりも10~50倍もの安全率を確保するように設定されています。

現時点においては、5Gが原因で人体に健康被害が及ぶといった確定的なエビデンスや研究結果は存在しないのが現状です。そのため、さまざまな国や地域で報告されている事例が、確実に5Gによるものなのか断定する根拠はなく、本当にそれが正しい情報であるのか、何が根拠となっているのかを判断することが求められます。

世界の5G競争をリードするために重要なこと

中国や米国などの海外諸国ではいち早く5Gの商用サービスが開始され、大きな話題となりました。日本では2020年春から商用サービスが開始されたこともあり、5Gの分野では世界から後れをとっているという指摘もあります。

しかし、中国や米国においても日本と同様、5Gが利用できるエリアは限定的であり、4Gのような実用的なサービスが展開できている国は存在しません。スタート時期の差はありますが、真価が問われるのはこれからです。

いかにスピード感をもってエリア拡充を進めていくかが極めて重要なポイントといえるでしょう。

参考:

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