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コラム

「デジタル・ニューディール」とは?今後の日本はどう変わっていく?

DX AI 生産性向上 ビジネスデザイン

2019年12月、政府は今後の日本の成長を支えるために未来への投資としてデジタル技術関連の予算を約1兆円計上しました。教育や中小企業支援、さらには最新の技術開発への支援など多岐にわたり、これらを総称して「デジタル・ニューディール」として打ち出しています。

20世紀に起こった世界恐慌に対するアメリカのニューディール政策を連想させるネーミングではありますが、このデジタル・ニューディールによって今後日本はどのように変わっていくのでしょうか。今回はデジタル・ニューディールの概要と具体的な予算規模、将来の展望まで詳しく解説していきます。

デジタル・ニューディールとは

2019年12月9日、政府は令和元年度補正予算案のなかで「未来への投資と東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた経済活力の維持・向上」として1兆円以上を計上しました。これには次世代IT関連技術への投資も含まれ、ポスト5Gの開発や学校のICT化、AIの開発なども挙げられました。

西村内閣府特命担当大臣は12月5日に開かれた記者会見において、これらを「デジタル・ニューディール」という言葉で説明。未来への投資として力を入れていくことを強調しました。デジタル・ニューディール政策は中小企業への支援から教育支援にいたるまで幅広く、未来のデジタル社会を見据えた政府の強い決意の表れともいえます。

デジタル・ニューディールの四つのポイント

デジタル・ニューディールにはさまざまな政策が含まれていますが、四つのポイントに整理したうえで予算金額も含め見ていきましょう。

GIGAスクール構想

GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想はデジタル・ニューディールの目玉ともいえる政策で、学校のICT化を進めていくために約2,318億円の予算を計上しています。全国の小中学校へ高速大容量ネットワーク環境を整備するとともに、1人1台コンピュータやタブレット端末の配備を令和5年度までに完了させる計画です。これを実現するために、政府は端末1台あたり上限4.5万円の補助を行うことも予定しています。

GIGAスクール構想は全国の学校を災害から守るための整備とあわせて、基本的なIT環境を整備し技術のイノベーションを推進。将来を担う子どもたちが常にICTに触れられる環境を構築し、イノベーションを起こせるような未来への投資として実施します。

ちなみに、文部科学省が2016年に実施した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によると、児童6.2人あたり1台のコンピュータが設置されている状況です。また、超高速インターネット(30Mbps以上)の接続率も84.2%となっており、GIGAスクール構想が実現すれば学校のICT環境は飛躍的に向上することになります。

中小企業の生産性向上

「中小企業生産性革命推進事業」として中小企業の生産性向上を支援するため、3,600億円の予算を計上しています。この中身は、企業へのIT導入によってバックオフィス業務を効率化し、サービス開発やプロセス改善に貢献する設備投資を支援するといったものです。

GIGAスクール構想の目的と同様に、日本の将来を担う中小企業やベンチャー企業の成長を促進し産業のイノベーションを起こすために、積極的なIT投資を行っていきます。中小企業は人手不足や賃上げなどさまざまな課題を抱えており、これらを解決しなければ長期的な成長は見込めません。このような課題は個々の企業だけにとどまらず、日本の産業全体にも関わってくるといえます。中小企業生産性革命推進事業では企業の制度変更に対する取組状況に応じて、IT導入や設備投資へ継続的に支援を行う計画です。

研究開発支援

日本の将来を担うICT分野の研究開発に対してさまざまな支援を行います。例えば、スーパーコンピューター「富岳」の開発に144億円、量子生命科学拠点の整備に125億円、さまざまな分野の若手研究者に対して平均700万円を最大10年間支援するため約500億円の予算を計上しました。さらにはICT分野だけにとどまらず、ロケットや人工衛星開発の分野にも317億円の予算を計上しています。

日本が今後継続的に成長していくためには、既存産業だけではなく新たな分野の研究開発も欠かせないものです。最先端の技術によって世界をリードしていくためにも、ICTや宇宙開発など新たな分野の研究開発に対して長期的な支援は必要不可欠です。

ポスト5G

デジタル・ニューディールに関する発表でもっとも大きな注目を集めたのが、ポスト5Gと呼ばれる技術に関するものです。2020年から日本でも次世代携帯電話ネットワークの5Gがサービス開始となりますが、すでに世界では5Gの次を担う技術の開発競争がスタートしています。携帯電話ネットワークはおよそ10年単位で新しい規格が登場しており、2030年ごろには5Gの次の規格が登場するものと期待されています。

5Gをめぐっては世界でさまざまな覇権争いが展開されていることからも分かるように、通信規格の主導権を握ることは重要な意味をもちます。そのため、政府は5Gの次に到来する新たな技術開発を国家的に支援するため、1,100億円の予算を計上しました。

日本の5G戦略は、世界的に見ると遅れをとっているといわざるを得ない状況が続いていますが、だからこそ5Gの次を担う通信技術を開発し巻き返しを図ることが非常に重要です。日本は通信端末や基地局などの開発では不利な状況ですが、ハードウェアの中核を担う半導体開発の分野では技術的に優位といわれています。

デジタル・ニューディールが注目される理由

日本は世界のなかでも年々競争力を失ってきている現状があります。これまでは自動車や家電製品といった製造分野で成長してきたものの、現時点では成長も鈍化し、今後も飛躍的な伸びが期待できるとは考えづらい状況にあることは確かです。

日本が今後成長していくためには、これまでの成功体験に固執するのではなく、広い視野で成長が見込まれる分野に集中的に投資していくことが重要といえます。それはまさにICTの分野であり、一見ICTとは関連性が低いと思われる産業も今後ICTを駆使したビジネスモデルが成長のエンジンになっていくはずです。

日本は少子高齢化にともなう労働人口の減少により、今後も深刻な人手不足は続いていくことは間違いないでしょう。むしろ、将来は今以上に少子高齢化が進み、解決すべき課題も多くなっていると考える方が現実的といえるかもしれません。人口が減っても生産性を維持しつつ、将来の日本を変えていくためには新しいテクノロジーによって仕組みを変え、効率的な生産プロセスを検討することが求められます。

デジタル・ニューディールは日本の成長を支える原動力となる産業や人材を生み出すための根幹施策といっても過言ではありません。

デジタル・ニューディールによって変わる日本の将来

東京オリンピック後の景気対策や災害からの復興など、日本には課題が山積していることは確かです。もちろん短期的な解決が求められる課題の優先度が上がるのはやむを得ないことですが、一方で将来を担う子どものためにも数十年単位で実行する政策も重要です。将来の成長産業になることが期待されているICTの分野に対して、デジタル・ニューディールのような計画が今後も求められていくと考えられます。

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