統計解析という言葉を聞くと難しいイメージを持たれがちですが、実は私たちの生活の中にも多用されており、身近な存在でもあります。
統計解析に関する知識をしっかり身に付けようとすると、数学的な難しい表現で記載された書籍や情報を読み取り、理解する必要がありますが、今回はそういった数学的な要素を省いて、できるだけ簡単な言葉で解説していきます。それぞれの統計解析手法において利用される事例もご紹介させていただきます。ぜひ、具体的なイメージを膨らませながら読んでみてください。
統計解析とは?
まずは統計解析とは何なのかについてみていきましょう。活用されている事例もあわせて見てみることで、より内容が理解しやすくなります。
統計解析とは……データを分析し傾向を読み取ること
統計解析とは、データを分析し、データから読み取れるパターンや傾向を明示することです。そもそもデータには数値化できるものとできないものがあります。数値化できるデータは少数であれば容易に内容を判断できますが、何千、何万といった数のデータが並んでいると、短時間でそこから内容を読み取ることは難しいものです。また、文章や画像、映像などはそもそも数値化することが難しく、人が理解して内容を整理することでその意味が見えてきます。
データと呼べるものがあれば、その集合体から内容を要約して全体の傾向を分析する際に統計解析が使われます。国や行政、企業など、あらゆる組織において重要な意思決定をするには根拠が必要となりますが、膨大なデータを意思決定の根拠とするためには統計解析の技術が必要不可欠です。
統計解析の事例
幅広い分野で活用されている統計解析ですが、具体的な事例を見ていきます。
●アンケート集計から相関を判断する
ある大学へ志望した学生に対し、受験勉強に要した時間をヒアリングし、合格者と不合格者の学習時間を集計するとします。感覚的に、不合格者よりも合格者の方が勉強時間は長いものと予想できますが、実際にどの程度の時間がボーダーラインとして考えられるのかまでは分かりません。しかし、実際にアンケートを集計してデータを取り、合格者数と勉強時間の相関を調べることによって、必要な勉強時間の目安が見えてきます。
●SNS分析
SNSにはユーザーのリアルな声が多くアップされています。たとえば、ある商品の口コミ情報をSNSから拾ってマーケティングに生かしたり、製品の改良に生かしたりすることも可能です。最新の事例としては、AIでSNSの声を自動的に分析し、統計解析によって評価を可視化するシステムもあります。
●渋滞情報の可視化
カーナビゲーションやスマートフォンのマップでは、どの道路が渋滞しているかがリアルタイムで表示されます。基本的な仕組みとしては、同じデバイスやアプリケーションを利用しているユーザーの位置情報を取得し、自動車で走行しているユーザーがどのポイントに集中しているかをベースに渋滞情報が割り出されます。
●人流データ分析
人流データとはその名の通り、人がどのように移動しているかを示すデータです。たとえば店内に設置したカメラで来店客の年齢層、性別を判断し、滞在時間はもちろん、どの売場にどの客層が多く訪れているかを分析することもできます。人流データを活用することによって、店内の動線にどの商品を配置すれば売り上げが向上するか、といったマーケティングにも役立てられます。
マーケティングにも統計解析は必要不可欠
統計解析の活用事例をいくつか挙げましたが、商品の売り上げ見込みや需要予測など、マーケティングにおいても統計解析は必要不可欠な存在です。POSデータから顧客属性と購入商品の傾向を判断したり、デジタル広告やSNSからのアクセス解析を行ったりすることで、ユーザーの潜在的なニーズを探ることができます。POSデータもアクセス解析もデジタルデータとして扱うことができるため、コンピューターを活用してさまざまな角度から統計解析を行うことができるようになりました。
ちなみに、POSデータを活用した統計解析は過去に実際に購入したユーザーのデータがもとになっており、過去に起きたことを解析することから「教師あり学習」と呼ばれます。反対に、ネット広告といったものからのアクセスをもとに解析する場合は、これから先に起こることを予測するものであるため、「教師なし学習」とも呼ばれています。マーケティングにおいてはいずれの方法も重要な要素で、これら複数のデータを根拠に統計解析によって結論を導くケースが多いです。
統計解析の種類
ひと口に統計解析といってもさまざまな種類があります。今回は、先ほど紹介した「教師あり学習」と「教師なし学習」のグループに分けていくつかの手法を紹介します。より分かりやすくするために、今回はそれぞれの解析手法において活用される用途についても具体的に見ていきましょう。
教師あり学習
●回帰
回帰は複数のデータから読み取れる傾向を解析するために有効です。x軸とy軸の対応するところにポイントを打ち、その点の集合体を俯瞰(ふかん)することによって傾向を判断します。マーケティングにおける活用事例としては、「店舗への滞在時間と売り上げの関係」や「単価と売り上げの関係」などを求める際に有効です。この方法を活用すると、同じ立地、同じ面積、同じ従業員数で売り上げの異なる店舗の要因を分析できます。
相関を求めるための解析はもちろん、統計解析の事例の中でも取り上げたようなボーダーラインを判別する際にも活用でき、マーケティングの基本とも言える解析方法が回帰です。
●分類
分類とはその名の通りグループ分けを行う解析方法です。商品を購入したユーザーに対しアンケートを取った場合、ポジティブな意見とネガティブな意見が出てくるものです。また、それぞれのグループの中でも同じような意見を持った回答が複数出てくることがあります。それらを整理していくつかのグループに分類するといった際に利用できます。
アンケート集計から意見を集約すると、その商品がどのような理由で選ばれたのかが分かります。また、反対に解決すべき課題点も明確に見えてくるため、ユーザーの意見を反映するうえでは必要不可欠な解析方法です。
教師なし学習
●クラスタリング
クラスタリングは分類と似た解析方法によって行われます。購入商品の大枠や特徴などを都度見分けますが、分類のように細かなグループに細分化することはありません。似たような特徴を持つおすすめ商品を提案する際に利用できます。
最近ではAIによる商品提案のサービスがECサイトを中心に提供され始めていますが、今後実店舗や自動販売機などにおいても商品提案サービスは拡大していくものと考えられます。どの性別、年代層にどのような商品が受け入れやすいのかを判定するうえでクラスタリングは欠かせない解析方法です。
統計解析を行うことで効率的なマーケティングが可能になる
統計解析はあらゆる場面で意思決定のための重要な根拠となるものです。そもそもマーケティングの最終目的は、顧客のニーズを的確につかみ、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることにあります。そのためには、最終的にどのような商品を開発して売り出すかという方向性を導き出す材料が必要不可欠です。統計解析を正しく理解し、客観的なデータを活用することで今以上に売り上げアップに貢献できる可能性が見えてきます。
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