DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が登場し、ITの力によって差別化を図ろうとする企業が増えています。国もDXの推進に向けて積極的に施策を打ち出しており、そのなかでも注目されているのが助成金・補助金です。
DXのような取り組みは資金力の弱い中小企業にとって不利だと思われがちですが、助成金や補助金を活用することによって中小企業でもDXを実現することが可能になります。今回の記事では、中小企業のDX実現に向けて有効な助成金や補助金について紹介していきます。
DX実現に向けた中小企業の課題
DXの実現に向けては、大企業から中小企業までさまざまな業種において施策が進められています。
しかし、既存の設備や社内システムではDXに対応できず、多額の設備投資やITシステムへの投資が必要とされるケースも少なくありません。資金力が豊富な大企業であれば問題ありませんが、中小企業の場合はコストがネックになり十分な施策を実施できないケースも考えられます。
しかし、このような課題を解決すべく国ではさまざまな助成金や補助金を提供しています。資金力の乏しい中小企業は、まずはDXの実現に向けてどのような助成金や補助金があるのかを調べ、自社でも対象となるのか支給要件を確認することから始めてみるとよいでしょう。
助成金や補助金の違い
そもそも助成金や補助金も返済の必要はないものなのですが、支給される際の要件やプロセスに違いがあります。まずはこの二つの違いについて詳しく見ていきましょう。
助成金とは
「助成金」とは一定条件を満たせばもらえるお金のことを指します。一般的に厚生労働省が提供している施策が多く、雇用や起業などに関連する助成金がメインです。代表的な助成金としては「雇用調整助成金」があります。これは何らかの事情により企業が稼働できなくなった場合、従業員をリストラするのではなく休業や出向などの措置を取る際に支給される助成金です。
助成金は支給要件を満たしていれば審査がなく受け取れるもののため、人材定着のために活用している中小企業は多いです。実施期間が限られている助成金もあるため、こまめに厚生労働省のホームページをチェックしておくと良いでしょう。厚生労働省以外にも、自治体で独自に助成金を用意している場合がありますので、該当する自治体のホームページをチェックしましょう。
補助金とは
「補助金」とは一定条件を満たし、審査が可決された場合に給付されるお金のことを指します。助成金とは異なり、補助金は国や地方自治体、特定の団体などさまざまなところが提供しており、種類も豊富です。
助成金は従業員に対する雇用の安定や就労などを目的として活用されるため支給金額は限られていますが、補助金は新規事業の立ち上げや自治体との連携など、それぞれの目的のもとで運用されるため一般的に支給金額の幅も大きくなっています。場合によっては規模の大きな事業になると、億単位の補助金が支給されるケースも珍しくありません。
ただし、それだけのお金を運用するだけあって審査も厳しいといえます。応募要件を満たしていたとしても、そのなかから審査によって補助金を支給する企業を決めることも多いため、申請したからといって必ず支給されるとは限りません。
DXに向けて役立つ補助金・助成金制度の事例
DXの実現に向けて役立つ補助金や助成金制度の事例をいくつかご紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金はIT機器やソフトウェア、各種システムなどを導入する際の経費の一部を支給する補助金です。業務効率化や売り上げアップを目的とし、それぞれの企業が抱える課題を解決すべくITベンダーやサービス事業者と相談しながら最適なシステム導入につなげることができます。
対象となっている企業はあくまでも中小企業と小規模事業者に限定されるため、業種によって資本金や従業員の数も限られています。例えば、建設業や製造業の場合は資本金3億円以下の会社、又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社が対象になります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
通称「ものづくり補助金」とも呼ばれるこの補助金制度は、中小企業の生産性向上を支援するための補助金として運用されています。革新性のあるものづくりや、成長が見込めると同時に収益が伸びると期待される分野を対象に支給されます。
審査にあたっては成長性や従業員への賃上げの状況、さらには企業規模なども重視されます。特に成長性においては新事業への取り組みを中心として経営革新計画の承認がおりていることが重視されるほか、企業規模が小さく創業間もない企業ほど有利になる仕組みです。
その一方で従業員への賃金引き上げ幅も見られるため、財務基盤が強い会社でなければ採択されにくい特性もあります。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは厚生労働省が提供している助成金制度です。アルバイトやパート従業員など、非正規雇用労働者を正規雇用労働者として処遇改善した際に支給対象となります。例えば中小企業のDX実現に向けて、契約社員や派遣社員、その他非正規雇用労働者を正社員化して新規事業に従事させるといった場合も助成金の対象になります。
また、DXを推進するにあたり、自社の社員だけでは専門性の高い労働者が確保できない場合であっても、キャリアアップ助成金を活用することで安定的な雇用を生み出すことが可能です。
DXを実現するためにはITの分野に精通した人材が必要不可欠です。そのためにも、キャリアアップ助成金を活用しながらパートや契約社員などを募集し、優秀な人材を迎え入れる体制を構築することが求められます。
中小企業は補助金と助成金を活用してDX実現を
ビジネス界ではDXというワードが大きなトレンドになっており、今後ITを活用した経営革新はあらゆる業種において避けては通れない道となっていくはずです。しかし一方で、現実的な課題として考えたときに資金力の問題を無視することはできません。DXに割ける予算が確保できないという理由でDXへの取り組みを諦めてしまう中小企業経営者は少なくないはずです。
また、DXのような先進的な取り組みは中小企業には関係なく、大企業がやるものという認識を持っている経営者もいるかもしれません。ましてや建設業や介護業など、ITとは縁遠いと考えられてきた業種の経営者はそのような考えでも不思議はありません。
しかし、DXは一部の企業だけが取り組むのではなく、日本全体で取り組む必要があるものです。たしかに中小企業は大企業に比べて資金力や人材力で劣る部分はあるかもしれませんが、今回紹介したような補助金や助成金を活用することで大企業との差を縮めていくことができるのです。グローバル化によって企業間の競争が激しくなるなか、これからの時代を生き残っていくためには従来のやり方に固執せず、ITの力を活用しながら徹底的に効率化を進めていくことが求められています。
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