「データドリブン経営」とは、近年注目を集めている経営手法です。
データを活用して、市場や消費者ニーズの変化に応じて戦略を決定することで、より魅力的な商品やサービスを開発することに繋がります。
しかし、データ活用には時間と労力がかかり、組織文化の変革も必要です。また、適切な方法で実施しなければ、意思決定に不備が発生することもあるでしょう。
そこで本記事では、データドリブン経営とは何か、その必要性やメリット・デメリットを解説します。具体的な進め方についても触れますので、ぜひ最後までご一読ください。
目次 |
データドリブン経営とは
データドリブン(Data Driven)経営とは、経験や勘に頼るのではなく、収集・蓄積されたデータの分析結果に基づいて戦略・方針を決める経営手法のことを指します。
データを収集するためには、さまざまな手段があります。
例えば、Webサイトのアクセスログや、企業の販売データなどを収集します。
収集したWebサイトのアクセスログから、どのようなユーザーが訪れているかを把握することで、そのユーザーに向けたサービスを提供することが可能となります。
また、販売データから、どのような商品が売れているかを把握し、その商品をさらに魅力的に改良することも可能です。
最新のデータをもとにした戦略・方針を決めることで自社の競争力を高め、市場をリードすることができます。
データドリブン経営の定義
データドリブン経営の定義は、さまざまなデータに基づいて判断・アクションするデータドリブンをベースとした経営です。
データ(情報)をドリブン(をもとにした)形で、経営を行うといった意味があります。
データからみる傾向等にあわせて、方向性を判断したり、状況を適切に理解したりするのが特徴です。
データドリブン経営の必要性
急速に変化する市場と消費者ニーズに対応するためには、データドリブン経営が不可欠と言われています。
従来の製品の性能に目を向けたプロダクトの開発では、多様化する市場と消費者ニーズに対応できず、新たに創出されるサービスとの差が広がるばかりです。
そこで、データを活用することで消費者の行動データを取得・分析し、消費者が求めているニーズを把握し、商品やサービスの開発に役立てます。
近年では分析ツール等が普及したことで、膨大なデータを手軽に取り扱えるようになりました。
データドリブン経営の3つの基本要素
データドリブン経営には、以下に挙げた3つの基本要素があります。
- データ活用の基盤の構築
- データ収集と分析
- 社内文化の醸成
データ活用の基盤の構築
まず、データドリブン経営ではデータ活用の基盤を構築します。
データを活用するためには、ERP(Enterprise Resources Planning)と呼ばれる基幹システムのデータを統合管理や、
BI(Business Intelligence)という部署ごとの目的に合わせ、必要な社内データを引き出して分析・加工できるツールの活用が一般的です。
データ収集と分析
データドリブン経営の基盤が構築できれば、データ収集と分析に使うツールを選定します。
ERPやBIとして活用できる以下の代表的なツールから選ぶと良いでしょう。
- Excel
- Tableau
- SPSS
- Microsoft Power BI
- Domo
- MotionBoard
- Google データポータル
- Qlik Sense
それぞれに特徴があり、データ収集に特化したツールや加工に特化したツール、加工と分析ができるツールなどさまざまな種類があります。
上記のツールを使用することで、データ収集と分析を実行できる状態を整えられます。
社内文化の醸成
データドリブン経営において、社内文化の醸成は重要な課題です。データの活用で組織をより効率化できますが、時間や労力も必要となります。
加えて、データ活用を実現できる組織体制にするには、価値観や習慣の変革も必要です。
洗い出した課題を整理し、適切に解決しながら何度も反復する根気が必要です。
データドリブン経営を実現するためにも、データを活用できる環境の構築に加えて、社内文化の醸成も同時に取組みましょう。
データドリブン経営が注目されている3つの理由
データドリブン経営が注目されるのには、主に以下に挙げた3つの理由があります。
- 意思決定をサポートできる
- ビジネス環境の変化が早い
- データの蓄積・分析が容易になっている
導入のハードルが低下し、時代に即したサービスを提供するために実行を求められていることが大きな特徴です。
意思決定をサポートできる
データドリブン経営では、データを収集・分析することで客観的な情報を収集でき、意思決定をサポートできます。
感情的な判断や勘に頼った判断を避け、より正確かつ根拠のあるアクションへ繋げられます。
データから現状を把握することで、商品や顧客対応の改善などの具体的な施策を立てる為の「解釈」を得ることができます。
また、データをもとにした意思決定は、経営者や社員の意見に偏るといった属人的な意思決定による課題も解消することができます。
ビジネス環境の変化が早い
現代のビジネス環境は、市場の変化や競合の動向など影響を与える要因は多岐にわたり、急速に変化しています。
こうした変化に対応するためには、迅速かつ正確な情報収集が必要です。
リアルタイムでデータを収集し、分析できるため、迅速な意思決定をサポートします。
また、顧客ニーズに合わせたプロダクトやサービスを作るために必要となる新鮮な情報を分析できることも利点です。
ビジネス環境の変化が早い時代では変化するニーズに対応し続けることが重要です。
データの蓄積・分析が容易になっている
データドリブン経営が注目されるようになった背景には、データの蓄積・分析が容易になったことも挙げられます。
現代ではクラウドサービスやビッグデータ技術の発展により、膨大なデータを簡単に蓄積・分析できるようになりました。
また、AI技術の進歩により、データの分析精度も向上しています。
これらの技術を活用することで、より正確なデータを収集・分析できるだけでなく、データの蓄積や分析にかかる時間やコストを削減できます。
データドリブン経営で得られる4つのメリット
データドリブン経営で得られる4つのメリットは、以下のとおりです。
- 売上や生産性が向上する
- 顧客ニーズを多角的に理解できる
- 客観的に経営判断ができ、課題を発見できる
- 迅速かつ精度の高い意思決定ができる
売上や生産性が向上する
データドリブン経営を行うことで、売上や生産性を向上できます。
例えば、顧客の行動履歴や嗜好、購買履歴などのデータを分析することで、顧客が何を求めているのか多角的に調査できます。
顧客が求めているものをデータで把握し、商品やサービスを改善することで顧客のニーズに合った商品やサービスを提供できるため売上を向上させることができます。
また、商品を製造する製造ラインのデータを分析することで、製造ラインの改善点を把握し、生産能力が向上できるのもメリットでしょう。
顧客ニーズを多角的に理解できる
データドリブン経営では、顧客ニーズを多角的に理解できるのもメリットです。
例えば、顧客の購買履歴やアクセスログなどのデータを分析すると、売れないと予想していた商品が売れているなど想定外のニーズを見つけることができるかもしれません。
上記のようにデータを分析することで多角的に顧客のニーズを理解することができます。
客観的に経営判断ができ、課題を発見できる
膨大なデータから現状を把握することで、客観的に経営判断をすることができます。
今までは経験や勘により判断していた場合でも、データを活用することで現状を数字として把握することができます。
数字で客観的に現状を把握することで、クリティカルに課題を発見することができます。
迅速かつ精度の高い意思決定ができる
素早くデータの分析・可視化(見える化)できることで、迅速かつ精度の高い意思決定ができます。
勘や経験に基づいた判断も素早いですが、そこにデータが加わることでより正確性を高められますし、判断に困る場合にもデータから推測できるためです。
加えて、蓄積されたデータから異変を見つけ出し、課題が顕在化する前に手を打てるのも利点でしょう。
データドリブン経営を行うデメリット
データドリブン経営を行うデメリットは、以下の3つが挙げられます。
- データを活用できるまでに時間がかかる
- データの信頼性や完全性に問題がある
- 専門人材を採用・育成するコストがかかる
データを活用できるまでに時間がかかる
データドリブン経営を行うデメリットとして、データを活用できるまでに時間がかかるという点が挙げられます。
データを扱えるようになるためには社員を育成する必要があり、各部署のデータを統合するために社内の各部署の協力が必要となるためです。
こうした活用できる状態を作り上げるまでに時間がかかることを考慮し、徐々に社内で変革を行いながら進めていく必要があるでしょう。
データの信頼性や完全性に問題がある場合がある
データドリブン経営を行うためには、データの信頼性や完全性が求められます。
しかし、収集したデータに入力の不備があったり、整理に誤りが発生したりした場合、意思決定にも大きな影響を与えてしまいます。
正しい形式で入力するだけでなく、定期的に確認するといったプロセスの導入も検討しましょう。
ヒューマンエラーによって差分やミスが発生しないよう、バックアップを取りつつ実施することも大切です。
専門人材を採用・育成するコストがかかる
データを活用するためには、専門的な知識やスキルを持つ人材が必要となり、採用・育成するコストがかかります。
また、社内で研修を実施するためのノウハウも必要です。
自社内でノウハウがない場合は、外部の研修サービスを利用してみると良いでしょう。
データドリブン経営の流れ
データドリブン経営は、以下の流れで行います。
- データドリブン経営に必要なデータを定義する
- データの収集と蓄積をする
- 収集したデータの可視化・見える化を行う
- ツールを使ってデータを分析する
- 分析結果に基づく計画を策定する
- 計画の実行と検証をする
データドリブン経営に必要なデータを定義する
まず、データドリブン経営に必要なデータを定義します。
経営判断をするためにはどのデータが必要かをあらかじめ定義すると失敗のリスクを減らせるためです。
例えば、Webマーケティングの成果を測定する場合、キーワードの検索数やクリック率などが重要な要素となります。
また、顧客データから現状を分析する場合は、顧客の属性や購買履歴が重要な指標になります。
データ収集を効率化し、必要なデータが不足するリスクを減らすために明確化しておきましょう。
データの収集と蓄積をする
データドリブン経営では、取り扱うデータの収集と蓄積からはじめます。
データを収集するツールやデータベースの構築・活用の準備ができていない場合は、事前の準備が必要です。
社内にあるデータを一元管理できる状態にしておくと、これまで蓄積されていたものも活用できます。
収集したデータの可視化・見える化を行う
収集したデータを可視化することで、そのデータをより正確に理解し、新しい課題を発見ができます。
グラフやチャートに変換できれば、深く洞察できますし、その傾向や関係性を見つけることができます。
ただし、注意点として分析結果が間違った方向にいかないために、分析に不必要な情報を取り除く「クレンジング」が必要です。
ツールを使ってデータを分析する
可視化したデータを分析することでより深く理解できると、有益な情報を得られます。
また、データが指し示す特徴や傾向を認識できれば、経営判断に役立つことがあるでしょう。
例えば、売上を伸ばすために「売上データ」から売上が落ちる傾向や時間帯を抜き出すとどうでしょうか。
その部分で取れる施策を傾向から割り出したり、落ち込む要因に基づいた施策を打ち出したりと売上を向上できるはずです。
このように、ツールを使ってデータを分析することは洞察を得て有益な情報を抜き出すために必要となりますし、効率化にも欠かせないプロセスです。
分析結果に基づく計画を策定する
実際にデータを分析した後は、その結果に基づいて計画を立てます。
計画の時には、必要となるコストやアクションの規模といった観点で細かく決定します。
計画を実行するために、担当者およびタスクの分担をし、実行後にはどのように結果検証をするのかも決めておきましょう。
なお、計画の策定においては「実現性が高いもの」であることも大切です。
どれだけ経営効果のあるプランでも、実行できなければ実現できないことがあるため注意しましょう。
計画の実行と検証をする
分析結果に基づく計画を策定できれば、実際に実行へ移します。
この際、施策ごとに決めておいた評価基準に基づいて、定期的に評価するプロセスを忘れないようにしましょう。
また、新規で得られたデータを幅広い視点から分析することも大切ですし、適切な分析から計画をアップデートすることでより効果的に運用できます。
適切な期間で振り返りを実施し、PDCAのサイクルを回しましょう。
まとめ
データドリブン経営を実現するには、データの収集・分析・活用の仕組みを構築する必要があります。
時間やコストがかかるものの、データを収集・分析・可視化して、その結果を基に意思決定を行うことで、合理的な判断を下せるでしょう。
ワークスアイディでは、データドリブン経営に必要となるデータの分析に加えて、可視化によって課題解決および注力したいこと(売上増加・コスト削減等)の支援を実施しています。
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